高密度化・高出力化が進むロボット機器と放熱の新たな課題
2025.7.17

浮上する放熱設計の難しさ
近年、産業用ロボットや協働ロボットはますます高性能化し、多軸化やAI制御による自律的な動作、センサー融合などによって、その応用領域は急拡大しています。しかし、これに伴って浮上しているのが放熱設計の難しさです。小型化されたアクチュエータや高出力モーター、サーボ制御ユニット、油圧・空圧配管が限られた筐体内に詰め込まれており、わずかな発熱でも性能劣化や動作不良を招く恐れがあります。特に24時間稼働が求められる現場では、熱による信号遅延・制御異常・部品寿命低下など、看過できないリスクとなってきています。
従来の放熱対策の限界 ― 限られた空間と可動性の制約
ロボット機器における従来の放熱手法としては、モーターに直接ヒートシンクを取り付けたり、筐体に冷却ファンを内蔵したりする方法が主流でした。しかしながら、軽量・コンパクト・静音性が重視されるロボット設計では、大型の放熱部材や空冷装置の搭載は難しいという制約があります。加えて、アームや軸の可動部には配線・配管が多く通っており、その部分の放熱設計が見落とされがちです。こうした箇所での熱蓄積は、センサ誤作動や駆動精度の低下を引き起こし、結果としてロボット全体の信頼性や寿命に影響を与える可能性があります。
「配管内外から熱を制御する3種のフィンソリューション
こうした課題に対して、最上インクスが提案するのが、配管や筐体部を対象とした3つの放熱ソリューションです。
ひとつ目の「パイプ・配管 外側巻き付けフィン」は、工具不要で配管の外周に装着できる金属製フィンで、狭所でも施工が容易。冷却水や油圧配管の外周から熱を逃がし、周辺機器への熱影響を抑制します。
ふたつ目の「パイプ・配管・流路 内側挿入フィン」は、流体と直接接触する管内側に装着し、伝熱効率を飛躍的に向上させることで、冷却時間を短縮。モーター冷却やバッテリー温調回路への応用に適しています。
そして、「その他 用途 各種フィン」は、放熱と同時に構造補強効果も備え、筐体外部や高負荷機器の熱管理用として有効です。いずれも、後付け可能かつ軽量構造で、ロボット設計の自由度を妨げない点が特長です。
実装効果と省エネへの寄与
ある協働ロボット開発メーカーでは、アーム内部を通る冷却用チューブに内側フィンを導入したことで、油温の安定性が向上し、サーボ制御の応答性が改善。また、配管巻き付け型フィンを使用した別の事例では、エンドエフェクター近傍の配管温度が20℃以上低下し、過熱保護による動作停止が激減しました。スタンダードフォールディングフィンを筐体外部に設置した工場では、冷却ファンの稼働率が下がり、年間で約9%の電力削減を実現。これらはすべて、機器の可用性・安全性向上とともに、省エネ・省メンテナンス化にも貢献しています。
熱の“見える化”から始める、次世代ロボットの放熱設計
ロボットは単なる「動く機械」から、「知能を持ち、環境と連携するシステム」へと進化しています。その進化を下支えするには、熱の管理もまた高度化が不可欠です。最上インクスの3種のフィン製品は、配管・筐体・内部流体といった多層的な熱領域に対応する柔軟な熱制御ツールです。省エネと信頼性を両立させる設計、そして可動性や安全性を妨げない放熱構造を実現することで、ロボットの真の性能を引き出す力となります。これからのロボット開発・改良の中で、「放熱」という視点を“見える化”し、最適化していくことが、次の進化のカギとなるのです。