バルブ機能を脅かす「熱」のリスク
2025.8.18

シール劣化・グランド部の硬化・作動不良を引き起こすリスク
バルブは、あらゆる産業プロセスで流体を制御する重要な要素機器です。液体・気体・蒸気などの流量・圧力・方向を調整するその役割は、化学、石油、食品、エネルギー、医薬品など多岐にわたる分野において欠かせません。しかしながら、配管内を流れる媒体が高温または低温の場合、バルブ本体およびその周辺配管が過熱・過冷となり、シール劣化・グランド部の硬化・作動不良を引き起こすリスクが存在します。また、熱膨張に伴うトルク変化や応答遅延が発生し、特に自動制御バルブでは精度の低下や誤動作に直結するため、バルブまわりの熱管理は極めて重要な課題となっています。
バルブ単体では解決できない周辺の放熱問題
多くの設計において、バルブ本体には断熱カバーや冷却ジャケットなどの保護措置が取られていますが、問題はその周辺を構成する配管の熱設計にあります。バルブ周辺の配管が熱をこもらせてしまうと、冷却が追いつかず、結果的にバルブ自体の温度も上昇。これがOリングの硬化、潤滑剤の劣化、さらにはアクチュエーターの誤作動につながることがあります。逆に、冷却媒体が通る配管では、周囲温度との差によって結露が発生し、錆や漏電のリスクを増大させることも。つまり、バルブの信頼性を維持するためには、バルブ単体ではなく配管も含めた“熱の全体設計”が必要不可欠なのです。
バルブまわりの熱管理を支える3つのフィン技術
このような熱課題に対し、最上インクスは3種類のフィン製品による熱制御ソリューションを提供しています。
まず「パイプ・配管 外側巻き付けフィン」は、バルブ前後の配管外周に巻き付けることで、放熱面積を拡大し、自然対流やファンとの併用で効率的に熱を放出。既設配管にも後付け可能で、施工性も高く評価されています。
次に「パイプ・配管・流路 内側挿入フィン」は、配管内にフィンを挿入し、流体と管壁の接触を増やして伝熱性能を向上。高温・冷却のどちらの用途にも有効で、流体温度の安定化に寄与します。
そして「その他 用途 各種フィン」は、より高温高圧環境での使用に耐えうる構造で、配管・バルブ周辺の過熱部に設置することで熱を分散し、装置全体の温度制御を補助します。
実際の導入効果と省エネ・保全性の向上
ある製薬工場では、滅菌プロセスのスチームラインに巻き付けフィンを施工したことで、バルブ周辺温度が約30℃低下し、アクチュエーターの誤作動が解消されました。また、冷却水ラインに内側フィンを導入した食品工場では、バルブ通過後の温度変化が安定し、サーモバルブの開閉精度が向上。さらに、スタンダードフィンを導入した石油化学プラントでは、遮断弁の周辺に集中していた放熱が分散され、周辺の配電盤内温度が下がったことで、電子部品の故障率が低減されたという実績もあります。これらの事例は、熱対策を通じた設備の省エネ化・信頼性向上・メンテナンスコスト削減の好例と言えます。
熱対策はバルブ設計の「最後のひと工夫」
バルブは、機械的・構造的な設計精度だけでなく、運転環境での“熱適応力”が求められる時代に入っています。最上インクスの3つのフィン製品は、バルブ本体に手を加えることなく、配管という視点から熱対策を可能にする柔軟なソリューションです。設計段階でも後付けでも導入が可能であり、設備全体の安全性とエネルギー効率を高めるための現実的なアプローチと言えるでしょう。これからのバルブ選定・配管設計においては、「熱の流れをどう整えるか」が、性能・寿命・運用コストに大きな影響を及ぼします。“流体を止める・流す”だけでなく、“熱を逃がす”という新たな視点を、バルブまわりに取り入れてみてはいかがでしょうか。