エネルギーインフラを支える「配管の熱管理」という視点
2025.8.25

配管自体の放熱対策が設計・運用の盲点に
電力・熱・ガス・再生可能エネルギーといった広範な分野を包含するエネルギー市場において、効率的な熱利用はますます重要性を増しています。ボイラー、タービン、燃焼機器、ヒートポンプ、排熱回収システムなど、多くのエネルギー機器が配管を介して熱を運搬し、変換・利用する構造を採っています。ところが、その熱の“通り道”である配管自体の放熱対策は、設計・運用の盲点となっていることが少なくありません。高温流体の損失、冷却効率の低下、周囲機器への熱影響など、配管からの“熱だまり”が原因となるトラブルは、エネルギー供給の安定性と経済性に大きく影響を与えています。
配管の放熱ロスが生む“見えないエネルギーコスト”
配管の熱対策が不十分な場合、エネルギー設備全体のパフォーマンスにさまざまな影響を及ぼします。例えば、熱媒配管の表面温度が高温のまま放置されると、空調負荷の増加や断熱材の劣化、作業者の安全リスクにつながります。一方、冷却水や冷媒が流れる配管が必要以上に外部へ熱を奪われれば、冷却効率が低下し、冷却装置のエネルギー消費が増大します。加えて、配管近傍の制御機器やセンサーが熱影響を受けると、システム全体の精度や安定性にも悪影響が生じます。このように、目に見えにくい熱損失=エネルギーロスをいかに低減するかが、今後のエネルギーインフラに求められる課題です。
3種のフィン製品で実現する「熱を流す設計」
こうした配管の熱課題に対して、最上インクスは3つの放熱フィン製品を提案しています。
まず「パイプ・配管 外側巻き付けフィン」は、既設配管の外周に取り付けて放熱面積を増加させ、自然対流・空冷を効率化する製品です。ボイラーや廃熱回収ラインなどの高温部に装着することで、熱の偏在を防ぎ、周囲温度の安定化に貢献します。
次に「パイプ・配管・流路 内側挿入フィン」は、管内の流体と接触する面積を増やし、伝熱効率を高める設計。熱交換器の効率向上、冷却立ち上がり時間の短縮、負荷応答性の改善など、エネルギー設備のパフォーマンス強化に直結します。
さらに「その他 用途 各種フィン」は、耐久性の高い構造で、屋外・高圧・高熱といった過酷環境下でも長期使用が可能。配管の放熱だけでなく、振動抑制や構造補強としても機能します。
実装による改善事例と省エネ効果
あるバイオマス発電所では、蒸気ラインに巻き付けフィンを導入したことで、配管表面温度が30℃低下。空調負荷が軽減し、周辺設備の誤作動リスクが低減しました。また、配管内側フィンを使用した地域熱供給施設では、加熱立ち上がり時間が15%短縮され、運転時のピーク電力削減につながりました。さらに、スタンダードフィンを導入したLNG供給設備では、屋外配管の放熱性能が向上し、冬場の霜付きや結露が大幅に抑制され、保守頻度も減少しています。これらの実例は、熱の適正管理によって省エネ・安全性・信頼性の3要素がバランスよく向上することを裏付けています。
「配管から考える熱設計」が次世代エネルギーを支える
再生可能エネルギーや省エネ型設備が進化する中で、エネルギーインフラ全体の最適化を図るには、「熱を生む」「熱を使う」だけでなく、「熱をどう逃がし、どう保つか」という視点が不可欠です。最上インクスの放熱フィンシリーズは、既設配管の後付けにも対応し、低コスト・短工期で熱効率を高める柔軟な手段として、エネルギー業界の多くの現場で導入が進んでいます。配管の“構造物”としての役割に、“熱設計の主役”という新しい価値を加えることで、次世代の持続可能なエネルギー供給体制を技術面から支えていきましょう。