薄板放熱フィンで配管・放熱管・金型・設備等の熱交換効率拡大

第2回:自動車熱交換器「エバポレータ」の小型/軽量化技術開発のお話

2021.11.08

元デンソー認定プロフェッショナル
夢双造研究所 大原敏夫
(㈱最上インクス 技術アドバイザー)

今回はカーエアコンの代表的熱交換器で「冷風を作るエバポレータ」の小型/軽量化についてお話させていただきます。結論から言いますと、「エバポレータは約30年間で体格、重量ともに1/4」くらいの小型、軽量化が進みました。特に30年前は「厚みが100mm程度ありましたが、近年は技術開発によって厚み60~40mm程度まで薄幅化」を実現出来ております。勿論、同一風量で同一性能を発揮することが出来ています。

そのような小型/軽量化を実現した考え方、開発した技術などを以下にご紹介させていただきます。 基本的な考え方は、「熱交換器」は「フィン」と「チューブ」から構成されているので、その双方の「熱伝達性能」と「集積度(軽量化)」を上げることで全体の性能を向上し、その性能向上分を「小型化」に振り向けることにしました。

具体的な設計要素と用いた加工技術

1)「フィンの熱伝達性能」を上げる為に

設計的には「フィンに切られたルーバと呼ばれる切込み部のピッチ寸法をより細かくすること」です。この30年の間に「ピッチ1.0mmから0.4mmまで細かく」することが出来ました。この設計が実現出来たのはルーバフィン加工に用いる「薄い刃のついた丸い板をルーバの枚数だけ重ねてローラにするなど、薄く刃を作る技術」などの加工技術開発の賜です。

2)「チューブの熱伝達性能」を上げる為に

設計的には「チューブの厚さを薄くし、さらに内部にインナーフィンを入れる様にすること」です。 30年前に「0.6mmだったチューブの板厚も0.2mmまで薄く」できるようになり、また「インナーフィンの板厚も0.1mmから0.04mmまで薄く」できるようになりました。当初は「チューブ内にフィンを高速で入れ、しかもロウ付けにおいて完全に接合されていること」などの課題もありましたが、生産技術の力で克服することが出来ました。

3)「フィンとチューブの集積度」を上げる為に

残る課題は集積度を上げることによる「重くなる」の課題解決でしたが、上記1)、2)で説明した通りフィン、チューブ共「板厚の薄厚化」の実現によって解決することが出来ました。

次回は板厚の薄厚化時に生じた課題と、その解決策として非常に有益であった「耐食性の画期的な向上」についてお話させていただきます。

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