第15回:インバータの冷却機構
2022.6.09
元デンソー認定プロフェッショナル
夢双造研究所 大原敏夫
(㈱最上インクス 技術アドバイザー)
今回はインバータの冷却機構に関してお話させていただきます。
インバータの冷却機構には、図の左に示す片面冷却と、右に示す両面冷却があります。
片面の場合は半導体素子を基盤にはんだ付けし、それをさらに窒化アルミニウムなどの熱伝導が良く絶縁性のあるセラミックの放熱板に接合して、それを冷却流路で冷却する構造となります。この場合には、半導体基板を片側から冷やすために、平板状の構造体に半導体チップを多数並べて片側から冷却する方式となります。
一方の両面冷却は、右図に示すように半導体チップに放熱板である銅の板を両面からはんだ付けし、樹脂でモールドしたパワーカードを両面から冷却する構造となります。放熱性能はほぼ二倍となります。
ただし注意が必要なのは、冷却器とパワーカードの間にはセラミックなどの絶縁板が必要なために、パワーカードと絶縁板、および絶縁板と冷却器の各々の接触部に空気層が存在しないように、グリースなどを介在させる必要があります。空気層は数十ミクロンでも熱抵抗が大きく、冷却性能を大きく低下させます。
高絶縁性と高熱伝導性を兼ね備えた柔らかいシートなども検討されています。
両面冷却は冷却性能の高さからコンパクトな冷却構造を持つことができるため、インバータ自体の小型化にも貢献しています。半導体はシリコン系の場合は耐熱温度が100~120℃が限界とされ、冷却水によってそれ以上の温度に上がらないように冷却されます。
それ以上の温度に上昇する場合には、インバータの出力を制限するように管理されています。
今後、電気自動車のパワーが増すにつれてインバータの放熱量が増大するため、ますます高性能な冷却システムが必要となることは間違いありません。一方で耐熱性に強いSiCのような半導体が普及することも予想されます。これにより発熱が抑えられることから冷却能力も抑えられ、電力変換時のエネルギーロスも低減できると期待されます。
次回は両面放熱パワーモジュールを冷却する冷却器についてお話させていただきます。