第16回:両面放熱パワーモジュールを冷却する冷却器
2022.6.20
元デンソー認定プロフェッショナル
夢双造研究所 大原敏夫
(㈱最上インクス 技術アドバイザー)
今回は両面放熱パワーモジュールを冷却する冷却器に関してお話させていただきます。
図は前のコラムでご説明した、両面冷却パワーモジュールを冷却する熱交換器の一例を示します。
最大の課題は、パワーモジュールを両面から冷却する方法です。冷却水通路を並行に配列し、その間にパワーモジュールを挟み込む発想は良いのですが、接触をどう確保するかが課題です。
当初は、短寸の蛇腹管を各チューブ間に配置すれば伸縮自在になると考えましたが、蛇腹管自体が高価なために成り立たないことが分かりました。そこでプレート自体の両端に膨出部を設け、これを集合、分配タンクとして機能させつつ、収縮可能な形状を設計しました。
すなわち、通路間にパワーモジュールを挿入し、その後圧縮をかけて冷却器とパワーモジュールを密着させ、バネで加圧維持する手法としました。内部には専用のラジエータで冷却された低温の冷却水が流れます。パワーモジュールは12~20個程度がインバータの出力の大きさによって配置されます。
冷却器はいわゆるプレートタイプの熱交換器でプレートを積層して、その後一体ロウ付けによって完成されます。冷却通路の放熱性能を向上させるためには、通路の中にインナーフィンも用いられます。このタイプの冷却システムの良さはパワーカードの枚数が異なる冷却システムが、冷却器の積層枚数を変えるだけで対応できるため、同じプレートの枚数を変えるだけで同じ製造ラインで作れる点です。
次回は「ヒートポンプの室外機の着霜問題とその防止技術」についてお話させていただきます。