第19回:バイオミメティクス(生物模倣)による技術の進化
2022.8.17
元デンソー認定プロフェッショナル
夢双造研究所 大原敏夫
(㈱最上インクス 技術アドバイザー)
今回はバイオミメティクス(生物模範)に関してお話させていただきます。
バイオミメティクスは工業製品のいたる所で使われており、また、今後の新製品開発にも大きく寄与すると考えられます。
古くは鳥の翼を模した人力飛行機や、オナモミの実の形状からマジックテープが生まれ、近年では蚊の吸血針をヒントにした、痛くない注射針や蓮の葉の撥水性を活用した濡れにくい表利用などがあります。
図はその中のいくつかを示したものです。
①は、サメ肌のリブレット構造で水中を泳ぐ時の流体抵抗を低減する働きがあり、これの応用としてスポーツ水着がよく知られています。また、管路内部を流れる流体の流動抵抗の低減や熱交換器のチューブ内を流れる流体の圧力損失を低減することにも役立ちそうです。
同様に、流動抵抗を減らすものとして、②のイルカの発する進行波や③のナマズの皮膚のぬめっとした表面のポリマーなどが研究対象になっています。
④はヤモリの足の吸着、脱着機能の原理ともいえる微細構造です。これを模した構造の接着テープも開発されています。また、⑤はカワセミのくちばしですが、これを模したものが新幹線500系で、高速でトンネルに突入すると、空気の圧縮波が生じて出口付近で大きな音がするといった問題解決に使われています。
このように、ナノテクノロジーの進化で、生物の微細構造を忠実にまねることができるようになり、技術開発が後押しされているのです。
次回は㈱最上インクスが開発した「フォールディングフィン」に関してその特徴、利点などをお話させていただきます。