薄板放熱フィンで配管・放熱管・金型・設備等の熱交換効率拡大

第8回:「アルミニウム板材の耐食性」と熱交換器のお話

2022.2.04

元デンソー認定プロフェッショナル
夢双造研究所 大原敏夫
(㈱最上インクス 技術アドバイザー)

今回は熱交換器に用いられるアルミニウムの板材、特にチューブの板厚がわずか0.2mmで、なぜ15年以上耐食性を持ち続けられるのかについて二話にわたってお話します。

図1は一般的に情報公開されているアルミ材の腐食形態です。

孔食と書かれた左上の図は、板厚の厚さ方向に進行し、短期間でチューブの水漏れや冷媒ガス漏れに繋がるため熱交換器にとって最も警戒すべき腐食モードであり、熱交換器設計者の大きな課題の一つがいかにこれを防ぐかです。

一般にカーエアコンの熱交換器はこのアルミニウムでできています。エバポレータやコンデンサは常に外気を取り入れて熱交換を行っており、常に外気環境にさらされています。外気には海からの塩素や排気ガスの硫黄、その他もろもろの腐食促進成分が含まれています。

過去に経験した腐食トラブルを紹介しますと、タイやフィリピンなど東南アジアに代表される高温多湿地帯では、エバポレータのような湿潤状態で使われる熱交換器はエアコンの年間の使用時間が長いことと相まって、3年程度の短期間でガス漏れに至るトラブルがありました。また、フィリピンのピナツボ火山の噴火で発生した硫黄酸化物が大気中に含まれることで腐食、ガス漏れに至ったこともありました。カリブ海の島、プエルトリコでは海岸の潮風による塩素が原因で早期ガス漏れに至ったこともありました。

コンデンサは湿潤状態で使われることは少ないのですが、潮風のきつい沿岸地域や寒冷地で凍結防止材を巻くことで、その中に含まれる腐食促進成分が原因でガス漏れを起こした事件もありました。

次回コラムでは、いかに耐食性を向上させて長い年月をガス漏れから防いでいるかについてお話します。

アルミ材の腐食形態
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