薄板放熱フィンで配管・放熱管・金型・設備等の熱交換効率拡大

第10回:「HVAC」と熱交換器のお話

2022.3.02

元デンソー認定プロフェッショナル
夢双造研究所 大原敏夫
(㈱最上インクス 技術アドバイザー)

今回はカーエアコンの冷風、温風を作るHVACという製品のお話をさせていただきます。

図はHVAC製品の内部構造を示しています。HVACとはHeating、 Ventilation、 and Air Conditioningの頭文字を並べたものです。

図の左端にはシロッコファンがあり、ここから外気や内気の空気を吸い込んで、右横にあるエバポレータやヒータコアなどの熱交換器に送り込みます。

ファンの種類には「シロッコ以外」にも、ラジエータに使われる「プロペラファン」や家庭エアコンの室内機に使われる「クロスフローファン」などがありますが、カーエアコンでは押し込む圧力が必要なので高圧力型の「シロッコファン」が使われています。

エバポレータの後流にヒータコアが並んで設置され、エバポレータで作られた5~10℃の冷風が、ヒータコアで作られる40~50℃の温風と混合されて乗客に丁度よい温度の空気となって、グリル(エアコン吹き出し口)から出てきます。また可動ドアでヒータコアを通る空気量の調節などをしています。

エバポレータのチューブ内は冷媒が流れており、空気の熱を吸収して蒸発し空気を冷却、除湿します。ヒータコアのチューブ内には、エンジンを冷却するラジエータの温水が流れ、空気と熱交換して空気を温めます。

近年、ハイブリッド車では燃費向上のためにエンジンの発熱が低く抑えられ、ラジエータの温水温度が低下傾向にあり、ヒータコアで十分な暖房が得られなくなってきました。

電気自動車のEVではエンジンそのものが在りませんので、暖房の熱源を他から調達する必要があります。EVの先駆けには電気ヒータが使われましたが、非常に電力を消耗しバッテリーの一充電走行距離を縮めるために、近年効率のよいヒートポンプが開発されているものもあります。

他にも、モータやインバータやバッテリーなどの発熱を捨てることなく、うまく暖房に使えるような総合熱マネジメントが重要になってきています。

次回はカーエアコンのエバポレータにおける水はけ問題とその解決方法についてお話させていただきます。

HVAC製品の内部構造
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