第12回:カーエアコンの冷凍サイクルとその課題について
2022.4.18
元デンソー認定プロフェッショナル
夢双造研究所 大原敏夫
(㈱最上インクス 技術アドバイザー)
前々回のコラムではHVACの構成についてお話し、前回のコラムでは水飛び問題解決のための親水性表面処理の話をさせていただきました。今回はカーエアコンの冷凍サイクルの構成と、その課題についてお話しさせていただきます。
図に示しますように、冷房の原理は冷凍サイクルという閉回路の中に、二つの熱交換器と冷媒を圧縮するコンプレッサ、および減圧装置である膨張弁からなる冷凍サイクルを動かすことで成り立ちます。
エバポレータ内部を流れる冷媒は0~10℃の冷たい温度であり、そこに20~30℃の外気をあてますと熱交換が起こり、内部の冷媒は蒸発し熱を奪います。そして外気は冷却されて冷風となります。冷媒の蒸発は夏場の庭に打ち水をすると涼しくなる原理と同じです。
蒸発した冷媒はコンプレッサに入り、ここで圧縮され、高温、高圧のガスになります。温度は80~100℃、圧力はおよそ1~1.5Mpaです。この高温高圧ガスがコンデンサという熱交換器に入り、ここで20~35℃の外気によって冷やされて液化します。これを凝縮と言います。
水蒸気が冷えると水になる原理と同じです。こうして液になった冷媒が膨張弁で高圧から低圧に減圧されて、0℃、0.2Mpa程度の低温の気液二層冷媒になります。これが再度エバポレータに入って外気と熱交換され、その繰り返しとなります。
最近は車の燃費向上要求に伴ってカーエアコンの省エネ化のニーズが高まっており、様々な検討がされています。一番効果的な方法はコンデンサの高性能化です。高性能にすると高圧が下がるため、コンプレッサの圧縮仕事が減ることでコンプレッサの入力エネルギーの低減につながります。また、コンプレッサ自体の高効率化も必要です。
技術革新によって、容量一定のコンプレッサから容量を可変できるコンプレッサに切り替わりました。さらに、近年の電動式コンプレッサではインバータを使った回転数制御により容量を変えています。
次回は「電気自動車の空調方式と課題について」お話させていただきます。