空気圧制御機器の進化と“熱”に対する新たな課題
2025.6.30

システム全体の安定性に影響を及ぼす新たな課題
空気圧制御機器は、製造・組立・搬送など多様な工程で活用される産業インフラの要です。特に近年は、IoT対応や高精度化の流れを受けて、電動アクチュエータや比例弁、高機能レギュレータなどが次々と登場し、システム全体の性能が向上しています。しかしその一方で、制御機器の密集化や高速応答化により発熱が顕在化しており、「空圧だから発熱リスクは少ない」という従来の常識は見直されつつあります。圧縮空気の供給源であるコンプレッサーやエアドライヤーから伸びる配管、制御バルブ周辺の温度上昇は、システム全体の安定性に影響を及ぼす新たな課題となっているのです。
従来の放熱対策と、現場での対応限界
現場では、冷却ファンの増設や配管断熱、機器間の離隔設計など、さまざまな放熱工夫が施されていますが、省スペース・高密度実装を求められる空圧制御盤内では限界があります。また、空気圧機器の構成要素であるFRLユニットやマニホールド、センサー類は樹脂・アルミ筐体で構成されることが多く、周囲温度に敏感です。とりわけ、高温の圧縮空気が流れる配管部やエアサブタンク周辺は、自然放熱だけでは処理しきれず、温度上昇が累積していく傾向があります。それにもかかわらず、配管は“流体搬送経路”として見られがちで、放熱対象としての設計が軽視されているのが実情です。
巻き付け式フォールディングフィンで配管放熱を効率化
そこで提案したいのが、最上インクス製「配管巻き付けフォールディングフィン」の活用です。この製品は、既設配管の外周に工具不要で簡単に巻き付けることで、放熱面積を大幅に拡大し、熱を外部へ効率的に逃がすことを目的とした金属フィン構造です。設計の自由度が高く、Φ10〜50mm程度の細径配管にも対応可能で、空気圧制御機器の分岐配管・ドレンライン・チラー配管など、狭小かつ熱がこもりやすい部位にピンポイントで導入可能です。また、軽量なアルミ素材やステンレス仕様が選択でき、錆・腐食への耐性もあり、屋内外を問わず設置が可能です。
実装による効果と導入事例の声
ある空圧制御機器メーカーでは、アクチュエータ制御ユニット周辺の空気配管にフォールディングフィンを導入したところ、表面温度低下。それに伴い、筐体内センサーの誤検知が減少し、システムの安定稼働時間が向上したと報告されています。また、FRLユニットの後段に接続された金属配管に導入した別の現場では、配管周辺の局所的な温度上昇が抑えられた結果、配管ジョイント部のシール劣化が改善され、メンテナンス周期の延長につながりました。特筆すべきは、これらの導入がライン停止を伴わず30分以内で完了した点であり、現場の稼働を妨げない熱対策として高評価を得ています。
空圧システムの信頼性を高める“見えない熱設計”を
空気圧制御機器の信頼性は、単に流体制御技術の高度化だけでは成立しません。“熱をどう扱うか”という視点を配管設計に組み込むことが、今後の製品競争力を左右します。最上インクス製フォールディングフィンは、こうした新たなニーズに応える柔軟な熱対策ソリューションです。設計初期からの採用はもちろん、既存設備への後付け改善にも対応し、空圧制御機器の長寿命化・安全性・省メンテナンス化に貢献します。放熱の「隠れたボトルネック」に目を向けることで、空圧機器の価値はさらに高まり、エンドユーザーからの信頼を獲得することにもつながるのです。